スポーツ歴は、野球と格闘技。体を動かすことに関しては、それなりに自信があった。昔から漫画『グラップラー刃牙』が大好きで、登場人物たちの強靭な肉体に対する憧れも抱いていた。
思いつきで始めたトレーニングが、毎日の習慣として身につき始めた頃、当時新しいボディメイク・カテゴリーとして注目を集め始めていた「フィジーク」の存在を知った。
「大会で優勝したら、 進むべき道が拓けるかもしれない」
出場を決意するや「負けたら自分の人生は終わる」と、優勝を絶対条件として追い込み続けた。結果は、優勝。爽やかなルックスとバキバキの体に、筋肉界がザワつき始めたのは、この頃からだ。日本フィジーク界の星として、今後の活躍に期待……されるようになったのも、つかの間。2ヶ月後、横川さんはボディビルへの転向を宣言した。
「トレーニングを始めたときからボディビルは好きだったんです。はじめは、見て楽しむものだと思っていたのですが……フィジークの舞台に立って、物足りなさを感じてしまったというか。自分は、鍛えた筋肉を強調して闘う『ポージング』がしたいんだってことに、気がつきました」
迷いがなかったわけではない。しかし「ジュラシック」こと木澤大祐さんをはじめとしたトップボディビルダーたちとの出会いや交流を経て、ボンヤリとしていた気持ちが確固たる意志へと姿を変えていった。木澤さんのようなスゴい体になりたい。トップ選手と同じステージで並びたい。日本選手権ファイナリストになって、史上最強の現チャンピオン・鈴木雅さんを超えてトップを獲りたい。
順風満帆、とはいかず。苦しみ続けた1年目
転向1年目、大きな挫折を味わった。コンディショニングに失敗し、体脂肪が思うように落ちずに焦った。苛立ち続け、転び続けた初シーズン。正直「もうやめたい」と思った時もあったというが、この苦しみを経たからこそ、17年の大躍進だったのだろうと振り返る。